Breaker's Break 04
どうにもならないことは忘れることが幸福だ、と誰かが言った。
その通りだと思った。
人間、忘れられる事は忘れた方がいいんだろう。
朔夜
が比較的綺麗に整頓された研究室を無残な状態にしている最中。
朝陽
は、一人でふらふらと歩いていた。
調べ物は妹に任せて自分は身体を張るときにのみ動くと決めていた彼は心底暇だったのだろう、
特に目的もなく散歩をしようと思い立ったのだ。
しかしな、と彼は思う。
どうせ行くなら俺も行ってみればよかった、大学何ざ見たこと無い、と。
彼の記憶は親がいなくなったところから始まる。
父親は流行病で死んだ、母親はいつのまにか行方不明。
気付いた時には幼い自分とそれ以上に幼い妹だけ。
途方にくれて、それでもどうにか生きようと努力はして。
「………教育なあ…他の国にいきゃあ誰でも受けられるんだろうけど」
幼い頃に想いを馳せながら、ぽつりと呟く。
自分はまともな教育といえる教育を受けてきたか。
自主性を重んずるなどといって教育の為の場を設けようとしない政府、それに反発する団体。
苦し紛れに学校のような所を作りはしたものの、学費は高額。
一般市民に払えるはずも無く、かといって金持ちは外の国から呼んだ家庭教師をつけている。
学問のレベルもそう高くは無い。
高い金を出して基礎のみを学ぶのならば他の国に行ってより高度な事を学ぶ方が良いに決まっている。
そこまで考えたところで、朝陽の携帯が鳴った。
思考をさえぎられた事に少し不機嫌になりつつも、取り出してディスプレイを眺め、
「何か進展あったか?」
通話ボタンを押すな否や、そう尋ねた。
僅かな物音の後、朔夜の声が流れ始める。
『……プロフィールが発掘された。あと、水道管の位置も分かった。今、ちょっとハックして他に何か無いか調べている』
朝陽は聞こえてきた普段と何ら変わりない妹の声に苦笑し、更に妹が取っている行動に苦笑した。
「ああ、頼むぜ。で、俺は何かするか?暇で暇で仕方ないんだけど」
『……本。電子工学の本、欲しい』
「そりゃいつものことだろ。俺が言いたいのは依頼に関してだよ」
『……特に無い。だから、本』
「わーったわーった…どこのだ?いつもの国のか?」
『……朝陽が以前買って来たこの国の学者が書いたものは酷かった』
「ねちねち言うなよ。つうかそれもう十年くらい前の話だろ」
『……私はしつこさに定評がある』
「誰からだ。友達といえるような友達もいないだろ、職業柄」
『……、どうでもいい。今日はここに泊り込むからそのつもりで』
「ああ、気をつけろよ。…あ、待った」
『……何?』
「ちっと、そうだな、三つほど話あるんだけど良いか?」
『……だから、何』
止められたところでそれを察していたのだろう、多少鬱陶しそうに朔夜が聞き返した。
「最初。今回の依頼人のことなんだが。どうしてまた他所じゃなくて国内で研究続けてるか分かるか?」
『……………………』
あまりにも長く続く沈黙に朝陽が質問を間違えたか、ならば何らかのフォローを入れるべきか迷っていたところで、
『……知らない。でも多分、本人が望んだのだとは思う。そうじゃなきゃ、こんな腐った環境にいるわけない』
「そうか。次。今、
倉上
は?」
『……午後の講義。多分暫く戻ってこないし、それに研究室を漁る許可は出ている』
「そりゃあ重畳。最後」
『……何?』
「お前さ。大学、行ってみたかったか?全部独学じゃ、流石に限界とかあるんじゃないのか?」
『……………。その話は、前にもしたけれど。私は現状に満足している。十分すぎると思っている。だから、問題はない』
「本当だな?」
『……、それは、じっくり学ぶ事は悪くないとは思う。けれど、私は満足している。
この仕事も嫌いじゃない。好き勝手にやれるのは楽しいし、朝陽も同じだと思う。
ストレス発散にもなるし、収入も割りと良い。だから、平気』
珍しく多くを話した妹に驚きながら、朝陽は満足そうな笑みを浮かべ、
「…あいよ。お前が言うならそうなんだろうな。分かった。じゃあな」
一方的に電話を切り、軽く走りながら近くにあった書店へ入っていった。
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Postscript
登場人物の相関とか、入れたほうがいいのだろうか。
…テーブルタグあまり好きじゃないんだけどな…
いや、でもあったほうが分かり易いは分かり易いんだろうけれど。
紹介ページだけでも作っておこうか。
とりあえず当面の課題は、人物ページの作成と。それと、マウスオーバーでルビ、と。
感想、誤字脱字等御座いましたら
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