Breaker's Break 02



馬鹿と気狂いは真実を言う。
それじゃあ、世間一般で隔離されかねない馬鹿と気狂いは何よりも豪いんじゃないのか?




を見送り、朝陽が部屋に戻った。

「おいおい、早速仕事かよ」
「……早く終わる事に越した事は無い。今、名簿をリストアップしている」
「何で」
「協力者が在籍又は教鞭をとっている可能性がないことも無い」
「そりゃあそうだけどな。…ん?000大学だっけか?」

みるみるうちに朝陽の顔が青ざめていった。
唐突に朔夜のパソコンをひったくると、リストをスクロールし、

「…俺今回の仕事降りるわ悪いね妹よ」
「……却下。何」
「いや、お前…000つったら、アイツがいるところじゃねえかよ」
「……ああ、彼女」
「恋人って意味で彼女っつってんなら俺は全力で訂正するよ」
「……丁度いいのに?」
「勘弁してくれよ…ま、一応仕事はやるけどな。うん」

それを聞いてから朔夜は朝陽からパソコンを取り返し、表に何かを打ち込んでいった。


 ・倉上静音(クラガミシズネ) 協力者01

打ち込み終わり、朝陽の顔を見、そして自分が打ち込んだ箇所を指差す。

「…俺に頼めって?」
「……当たり前。私はこの人と連絡を取る手段を持っていない」
「調べるくらいお前なら簡単だろ」
「……億劫」
「そうかよ…ったく」

心底嫌そうな顔をしながら、朝陽は携帯を取り出した。
数秒の呼び出し音の後、

『はいはいはいはいはいはいはいっ。何かな何かな、何かあたしに用事かな?』

明るい声が響く。
それも大音量で。

「うっるせえよ…名前と真逆な奴め」
『何だよう、君に言われたくないねえ!朝陽というのは名ばかりでとんだ根暗青年じゃないかあ』
「無駄にキャラが立ちすぎだ」
『ん?ああ、朝陽君影うっすいもんね。で?何?苦手だ苦手だと面と向かって散々言ってきたくせに何の用事だいお兄ちゃん』
「…何かもう話すの面倒になってきたな、切ってい?」
「……ダメ」
『相変わらず尻に敷かれてるねえ。何、依頼か何か?無償で受けてあげるよ?』

受話器から数センチ耳を離していても煩いくらいの声、
それも心底楽しくてたまらないといった風な声を聞き、
朝陽は深いため息を吐いた。

「…………。協力だ、協力の要請。あんたが今通ってる大学ぶっ壊しに行くの。それとテンション下げて」
『はい?…ううん、参ったねそりゃあ!ここ結構居心地良いんだけど…今の嘘ね。で?』
「意味なく叫ぶな。…朔夜をさ。何とかして、こう、上手く入れられないか?」
『普通に入っても大して問題ない気がするけどね。…まああたしの助手で入れてもいいけどさ』
「……助手?」
『おんやあ、妹ちゃん知らなかった?あたしこれでも助教授なんだけど」
「……知ってます」
「世も末だ」
『何だよう、君よりは頭いいぞお兄ちゃん。…うん、分かったよ、おいで。報酬とかは無いけどそれでも良ければね。明日からね』

それじゃ。
ぶちりと切れ、部屋には静寂が訪れる。
うんざりしたように携帯を見つめる朝陽と、パソコンを操作し続ける朔夜。

「…だとよ」
「……分かった」
「他にいるのか?協力してくれそうな奴」
「……以前引き受けた仕事の依頼者。データ破壊の人」
「んな奴沢山いたろ」
「……朝陽が妙に気にかけていた美人の人」
「マジかよ」
「……マジ」
「頼んでいい?」
「……却下。一人いればいいと思う」
「なら最初から訊くなよ!」

思わず叫んだ朝陽を物ともせず、朔夜は渡された図面を凝視した。
一瞬考えた後、引き出しから眼鏡を出し、掛ける。
何事かを呟きながら手元のパソコンに猛烈な勢いで打ち込んでいく。

「…仕方ねえよなあ…あ、寝てきて良い?」
「……自由にすれば良いと思う。何が仕方ないの?」
「こっちの話だよ。…お休み」
「……気にしない事にするけれど、一つだけ言う。暇さえあれば惰眠を貪るのはよくない」
「寝ないお前よかマシだろ。…じゃあな」
「……ん」

朔夜は小さく頷き、

「……始まる?」

呟いた。
小さすぎる声が、部屋に溶け、消えた。






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Postscript

冒頭にはどっかから名言的なものを入れることにしてみた。
いや、最初から入れてはいるけれど。
影響を受けているのは…まあ、仕方ないだろう。
芸術は模倣に始まる。
技法だってアイディアだって、多分どこかで被っている。
それをより早く形にしたほうが上になるんだろう。



感想、誤字脱字等御座いましたら拍手へ。
糧になります。